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JR札幌駅(中央右)の東隣で計画されている高層ビルは、新幹線札幌延伸の遅れの余波で、開業時期が6年遅れて2034年度になった=2025年2月、札幌市中央区、上地兼太郎撮影

 開業から9年がたった北海道新幹線。利用者増加の鍵を握る札幌延伸の時期は、2035年度末、30年度末、最速で38年度末と変更を重ねている。その原因や影響、教訓を考える。

  • 政治の要求と技術者の過信が災い 北海道新幹線延伸がぶれ続けるわけ

 「開業が大幅に遅れることはにわかに受け入れられるものではない」

 4月4日、東京・霞が関の国土交通省。鈴木直道知事と沿線自治体の首長、道商連会頭らは「オール北海道」で緊急要望書を中野洋昌・国交相に手渡した。国交省の有識者会議が3月にまとめた報告書で示された開業時期は、最速でも2038年度。まちづくりや地元経済に悪影響を及ぼすのは確実で、危機感は強い。

 鈴木知事は3月の記者会見で有識者会議の報告後も国が開業時期を明示していない点に言及。「はい、そうですかということにはならない。冷静に政府与党として決めた中で整理することも必要」と語った。知事周辺は「政治の力で前倒ししたのだから、今回もまた前倒ししろというメッセージだ」と解説する。

 「我田引鉄」という言葉があるように、戦前から鉄道の敷設は政治の介入が常だ。東京と地方を高速で結ぶ新幹線はその象徴といえる。

 しかし、近年は、その政治先行のプロセスにほころびが目立っている。

 北陸新幹線の金沢―敦賀間は、外部の経済環境悪化などもあり、開業が当初より1年遅れた。検証委員会が21年にまとめた報告書は「用地取得や地質不良などの不確定要素が存在する一方、地元からの工期遵守(じゅんしゅ)の期待が高く、工期の見直しが困難」としたうえで、「無理な工程に陥りやすい」と指摘している。

 新幹線が札幌まで延びれば、新函館北斗―札幌が約1時間で結ばれる予定だ。観光や地域振興に期待していた沿線に住む人や自治体、道内経済への遅れの影響は大きいなか、特に痛手なのが、経営再建中のJR北海道だ。

 1987年の国鉄分割・民営…

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