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写真・図版
国宝「風神雷神図屛風」 俵屋宗達筆 江戸時代 17世紀 京都・建仁寺蔵
(通期展示)

 大阪・関西万博の開催を記念して、日本美術の歴史を振り返る「日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―」展が、京都国立博物館(京都市東山区)で開かれている。歴史を振り返れば、万国博覧会と日本美術には深いつながりがある。「世界に見られた日本美術」「世界に見せたかった日本美術」と名付けられた二つのプロローグに並ぶ作品が、そのことを物語っている。

 国際的な博覧会は、1851年の第1回ロンドン万博から始まった。ペリーが黒船を率いて来航する2年前で、日本はまだ開国していなかった。万博への初参加は第2回パリ万博(67年)で、江戸幕府だけでなく、薩摩藩と佐賀藩もそれぞれ独立して参加した。

 当時は、欧米列強が威勢を振るう帝国主義の時代。68年に誕生した明治政府にとって、万博は輸出品を売り込む場であると同時に、国威発揚の場でもあった。明治政府はウィーン万博(73年)に国として公式に初参加。万博終了後に、出品物を日本に運ぶ貨物船が沈没する不幸に見舞われたが、それでもフィラデルフィア万博(76年)、第3回パリ万博(78年)と参加を続けた。

 「世界に見られた日本美術」の展示では、江戸時代末期から明治時代にかけて、西洋の美術市場で人気を集めた品々が並ぶ。葛飾北斎「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」(1831年ごろ)といった浮世絵や、蒔絵(まきえ)の箱、印籠(いんろう)・根付(ねつけ)、超絶技巧の彫刻などだ。幸運にも沈没した貨物船から引き揚げられた蒔絵の料紙・硯(すずり)箱もある。

写真・図版
「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」 葛飾北斎画 江戸時代 天保2(1831)年頃 山口県立萩美術館・浦上記念館蔵
(前期展示。後期は大阪・和泉市久保惣記念美術館所蔵品を展示)

 だが、北斎の浮世絵ですら…

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