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インドネシアの首都ジャカルタで2025年4月11日、米アップルのスマートフォン「iPhone16」を売る店舗の外に並ぶ女性=AFP時事

 米アップルのスマートフォンiPhoneの最新シリーズ「16」の販売が、世界から半年以上遅れて4月に新興大国インドネシアで始まった。遅れた理由は同国政府が製品の国内販売を禁じてきたためだ。背景には、巨大な人口を切り札に製品供給網を自国へと引き込もうとする同国と、グローバル企業との駆け引きがあった。

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 4月11日。首都ジャカルタ中心部のショッピングモールに、開店時間を前に長蛇の列ができた。客の目当ては、この日から国内販売が始まったiPhone16だ。列の先頭に並んだ自営業のイヴァンさん(26)は、韓国のサムスン電子製のスマホを愛用していたが、トランプ米政権の「相互関税」導入を機に乗り換えを決意したという。関税合戦の影響を受けて、今後iPhoneの販売価格が上がるかもしれないと思ったためだ。イヴァンさんは「先頭で並べて幸運だ」と興奮気味に話した。

 国内でアップルの認定販売店を運営する小売業者によると、販売価格は1台1590万インドネシアルピア(約14万円)から。政府の統計では都市や職種ごとに差はあるものの、国内の平均月収は500万ルピアほどとされる。安い買い物ではないはずだが、整理券を手に行列に並んだ人々が次々と製品を受け取った。

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iPhone16を買い求める列の先頭に並んだ自営業のイヴァンさん(26)。朝6時に一番乗りした=2025年4月11日午前10時39分、ジャカルタ、河野光汰撮影

 アップルは昨年9月に「16」を世界で発売したが、インドネシア政府はiPhoneが同国の定める電子機器の「国産化率」の基準に達していないとして販売を禁止した。

 製造業振興を目指す同国は、電子機器や医薬品などに、仕入れや製造過程における原材料や作業人員などの現地調達比率を設定。スマホは35%以上とし、従わなければ企業に製品の販売禁止といった制裁を科す。この措置を巡り、同国とGAFAの一角が綱引きを繰り広げたのだ。

iPhone16の販売を巡り、インドネシア政府と米アップルが繰り広げた駆け引きの内容とは。記事後半では、製造業振興を進めたい同国の背景事情と、トランプ関税の影響について伝えます。

 現地報道によると、アップル…

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