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写真・図版
宮越家のふすま絵の「春景花鳥図」=青森県中泊町、同町教育委員会提供

 大正期のステンドグラスの傑作や、約400年前の狩野派のふすま絵が残る、中泊町・宮越家の離れと庭園の春の一般公開が、23日から始まる。今回は、宮越家にある「春景花鳥図」と、対をなす大英博物館の「秋冬花鳥図」の高精細複製レプリカが一緒に並ぶ特別展が企画された。レプリカとはいえ、ロンドンと津軽半島に離ればなれになっていた「きょうだい」が150年ぶりに再会する形を鑑賞できる。

 二つのふすま絵は、桜花爛漫(らんまん)のもと、つがいのキジがひなと遊ぶ様や、紅葉したカエデの下でのカリ、水辺で休むカモなどが精緻(せいち)に描かれ、金銀の砂子や切箔(きりはく)が装飾されている。江戸時代初期の狩野派の特徴が顕著だ。奈良県桜井市の談山神社(旧多武峰妙楽寺)が所蔵していたものが、明治の廃仏毀釈(きしゃく)のあおりで散逸した。「春景」は、1922年に宮越家の9代当主・正治さんが東京美術倶楽部(くらぶ)のオークションで落札。「秋冬」は、1937年に京都の画商を経て大英博物館に渡った。

 「秋冬」については、日本古来の貴重な文化財を支援するために、キヤノンと京都文化協会が共同で作っている「綴(つづり)プロジェクト」が渡英して、キヤノンの高精細カメラと画像処理などで複製品を制作。2018年6月、談山神社に奉納した。

 かつて「秋冬」を見たことがある山下善也・元京都国立博物館主任研究員のもとに23年春、「春景」の写真が届き、同年秋に宮越家を訪れて鑑定。山下さんは「二つのふすま絵は一対のもの」と断定し、24年9月に発表した。今回の特別展示は山下さんが監修する。

 4月10日には、宮越家現当主の寛さん(66)に斎藤淳・町博物館長、キヤノンと京都文化協会の担当者らも交えて、「奥の間」での二つのふすま絵の並べ方などを検討した。「きょうだい」は、9月の秋の一般公開でも展示される予定だ。寛さんは「わが家にあるふすま絵と大英博物館のをそろえて見たいと思っていました。レプリカながらそれが実現するのは楽しみ。いつか本当の『きょうだい』が並ぶのを期待しています」と話している。

 春の一般公開は6月29日まで。完全予約制で料金2500円。1日8便(1便につき10人)のシャトルバスを利用。月曜休館。問い合わせは、中泊町文化観光交流協会(電話0173・57・9030)へ。

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