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保管のため、対馬博物館に運ばれる観世音菩薩坐像(ぼさつざぞう)=2025年5月12日午後3時18分、長崎県対馬市、伊藤進之介撮影
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 長崎県対馬市豊玉町小綱の観音寺から、2012年に韓国人窃盗団に持ち去られ、12日に戻ってきた県指定有形文化財「観世音菩薩(ぼさつ)坐像(ざぞう)」。檀家(だんか)など地域住民らは13年間、本尊との再会を待ち続けてきた。

 住民たちは11日朝から寺を掃除して、翌日に備えた。梱包(こんぽう)された仏像は韓国から空路で福岡に運ばれ、12日未明に船で対馬に到着した。

 午前10時ごろ、仏像を載せたトラックが寺に着くと、集まった檀家の中には、手を合わせて拝む人もいた。寺に安置されると、田中節孝前住職(78)は「ここにあることが、とても自然に感じられた」と語った。

 午後1時から営まれた法要には、住民や比田勝尚喜市長ら約40人が参列した。

 終了後の記者会見で、田中節竜住職(49)は「国、県、市の関係者の皆様、日韓両国の多くの方にご支援をいただき、感謝している。本当に長かった。やっと、という感じ」と話した。

 檀家総代の村瀬定さん(76)は、「仏像は私たちの宝。自分が生きている間には戻らないのではと思っていた」と喜ぶ。ただ、盗難防止のため、仏像が今後、地元から離れた対馬博物館に寄託されることについては、「博物館に行くのは寂しいが、また盗まれても困る」と複雑な思いだ。

 檀家のひとり、安野冷美子さん(86)も「うれしくて、涙が出ます。でも、博物館に保管されることは悲しい。足が弱っていて、見に行くことが難しい」と語った。

 法要終了後、仏像は再び梱包されて、対馬博物館に運ばれた。16日~6月15日の特別公開は、市民は無料で観覧できる。

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