住宅街の一角に「狛江の小さな沖縄資料館」(東京都狛江市)はある。
玄関から入ってすぐにある米軍基地を囲むフェンスを模した飾りをくぐると、約70平方メートルの空間には小さな沖縄が広がっている。約5千点の資料が並び、沖縄で親しまれている樹木「ガジュマル」のオブジェもある。
資料館を運営するのは、舞台俳優の高山正樹さん(67)。沖縄との関わりは、青年期にさかのぼる。20代のころ、アイヌの青年役を演じる機会があり、「日本社会の『周縁』にいる人々の存在に関心が向かった」という。
「沖縄を舞台にした脚本を書こう」と考え、現地に行って取材したり、沖縄の歴史や文化に関する書籍を読みあさったりした。その間、縁あって沖縄出身の女性と結婚。三線も弾けるようになった。
三線教室や沖縄の映画祭も開いた。「俳優としてできることを」との思いで、小説の朗読を通して沖縄のことを伝える挑戦もした。初の沖縄出身芥川賞作家・大城立裕さんの小説「カクテル・パーティー」の朗読CDを2008年に制作した。大城さんとは面識がなかったが、知人をたどってなんとか連絡をとると、「とりあえず会いにいらっしゃい」と自宅に呼ばれた。思いを伝えると、快諾してくれた。
こうした活動を続けながらも、沖縄を知れば知るほど、「本土にいる自分が、沖縄を容易に解釈し、利用することになるのでは」と疑念がわき、「本土出身の自分に沖縄を舞台にした脚本は書けない」との思いは強まった。
沖縄に対する「負い目」。か…