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「その時代を繰り返してはいけない」と呼びかけるメンバー=2025年4月22日、JR・京阪石山駅のデッキ、高田誠撮影
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 物静かで短歌を愛する「祖父」は戦前、口の中に大量の水を無理やり流し込まれる拷問に耐えた。戦後の亡き後、遺品からあるものが見つかった。国が人々の思想・言論の自由を奪った治安維持法の成立から今年で100年。「祖父」は何を伝えようとしたのか。

 松井幸次郎さんは1910(明治43)年、京都市で生まれ、育った。「礎をきずいた人びと」(滋賀民報社)に経歴が10行程度だけ紹介されている。

 それによると、25(大正14)年、京都市立第二商業学校で軍事教練反対運動、29(昭和4)年に日本プロレタリア映画同盟に参加した。32(昭和7)年、治安維持法違反で京都・川端署に3回検挙され、拷問を受けるが黙秘で闘った――。

 大津市の膳所診療所長、東昌子さん(62)の母は両親を早くに亡くしたため、父の弟である松井さん夫妻に育てられた。東さんも小学校卒業まで大津市で一緒に暮らしており、実の祖父と思っていた。

 読書家で書斎の本棚には短歌集が並んでいた。トランプや将棋で遊んでくれた松井さんからは、治安維持法違反で検挙された話を弟とともによく聞かされた。

 共産主義者が弾圧の対象だっ…

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