台湾から東へ約110キロにある日本最西端の沖縄・与那国島。
25年4月上旬、佐賀県の山口祥義知事が島を初めて訪れ、与那国町の町長や議会、漁協や商工会の関係者らと向き合っていた。
「数日前にも、中国軍が台湾周辺で軍事演習を行った。漁師の間では『(自分たちにも)危険が及ぶんじゃないか』と話しながら日々を暮らしている」。与那国町の大宜見浩利副議長は中国の動きに対する不安を口にした。
「台湾有事」などを念頭に沖縄・先島諸島の住民ら11万人を九州・山口に避難させる計画づくりが進んでいます。その裏で、避難対象の住民や計画策定を担う自治体には、懸念や戸惑いが広がっていました。
先島諸島では16年以降、陸自の駐屯地が相次いで開設された。与那国町は人口減対策や経済効果を狙い、沿岸監視部隊を受け入れた。ただ、国側は後になって電子戦部隊やミサイル部隊の配備を次々と決めており、「誘致時の前提から変わってしまった」と不信感を抱く人もいる。
22年には、中国が台湾を取り囲む形で軍事演習を行い、発射された弾道ミサイルが与那国島から約80キロの地点に落下。島民は漁の自粛を余儀なくされた。その後も、漁業無線に中国軍側の動きを受けた注意喚起が流れることが度々あるという。大宜見さんは「無線を聞いていると、どうしても緊張感が増す」と言う。
島民「日本側が有事をつくっていないか」
実際に「有事」が発生した際…