熊本県内の大学が、企業や自治体とコラボした新商品やグッズを次々と開発している。それぞれの大学の研究成果や授業の取り組みが学外と結びつき、独自性を打ち出している。
熊本大学は、まったく新しい麦焼酎を開発した。大学院生物環境農学国際研究センターの谷時雄特任教授のグループに、福岡県筑前町の酒蔵「天盃(てんぱい)」が協力した。
酒づくりに使われる酵母などは通常、出芽で増えるタイプだ。しかし谷特任教授らは世界で4種しか発見例がない分裂で増える酵母を使ってこれまで挑戦を続け、芋焼酎やビールを生み出してきた。「未知の味や香りを見つけたい」と狙いを語る。
今回は第4弾にあたる「麦焼酎」だ。実験室の段階では、バラのような香りが強く出てくる酵母の分離に成功。だが実際に酒蔵で1年かけて麦焼酎を仕込んだところ、バラの香りは消えてしまったが、代わりに洋梨のような甘い香りの麦焼酎に仕上がった。
「最初の目標とは違ったが、他のいろいろな香りが混じり合って大変においしく、おもしろい焼酎ができた」と満足げな谷特任教授。酵母名をもとにした「ジャポニカスバーリーS34」の商品名で限定販売した。
東海大学は新感覚のスイーツを生み出した。大学で研究してきた乳酸菌を使ったヨーグルトと、大津町の特産のカライモを組み合わせ、熊本市のどら焼き専門店「どらがしあんあん」が新商品を開発。「大津町熟成からいもどら焼き」(税込み350円)と名付け、6月15日までの期間限定で販売している。
カライモを練ったあんに、乳酸菌を使った豆乳ヨーグルトを練り込み、どらがしあんあん独自のふわふわと軟らかい生地にはさんだ。やさしい甘さと酸味のバランスが特徴だ。
山鹿市を拠点に活動するハンドボールチーム「熊本ビューストピンディーズ」の限定Tシャツを制作したのは、崇城大学芸術学部の学生たちだ。実践的な問題の解決策を探る「プロジェクト型授業」に同チームが協力し、「競技会場での一体感の演出」などの課題に取り組んだ成果だ。
Tシャツは、チームのキャラクター「ビュースト」の顔をあしらい、力強さと美しさを兼ね備えたデザイン。2月に山鹿市内であったホーム戦を記念して限定配布され、すでに在庫なし。ファンの貴重アイテムになった。