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砂漠に捨てられた洋服を手にするNGOのサンブラーナさん=2025年5月13日午前11時36分、チリ北部アルトオスピシオ、河崎優子撮影

 南米チリの砂漠に、「洋服の墓場」と呼ばれる場所がある。各国のアパレルブランドの服が捨てられ、山のように積み上がっているからだ。大量生産・大量消費社会が生んだ大量の売れ残りや古着が、南米の砂漠に押しつけられている。

 チリ北部のアンデス山脈に沿って、南北に1千キロにわたって延びるアタカマ砂漠。砂漠の中にある居住地域を車で抜けると、あたり一面に洋服や靴、バッグなどが捨てられた異様な光景が目に飛び込んでくる。

 近くで見ると、スペインのアパレルブランド「ZARA(ザ ラ)」や中国発のインターネット通販「SHEIN(シーイン)」などの服だ。燃やされた衣類の黒い灰が風で舞い、プラスチックの焦げたような臭いが漂う。

 衣類のリサイクルを広める地元NGO「洋服を着た砂漠」の共同設立者、ジャンカルラ・サンブラーナさん(31)は、「こんな場所があちこちにある。2022年時点で、砂漠に捨てられた服は推計4万トン。世界から、いらない服が送られてくる」と肩をすくめる。

 車で約30分の場所にあるイキケ港は、関税が免除される自由貿易港だ。低迷する経済の活性化を図るため、1970年代に政府が自由貿易地域に指定した。

 衛生面や環境保護を理由に、他国が古着の輸入を禁止する一方、チリは世界有数の古着輸入国となった。古着の売買が活況となり、輸入業者が古着を買い取るため、年間4万~6万トンの売れ残りの洋服や古着が、欧米などからたどり着く。その多くは価値のない、よれよれの服だ。

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港の近くで衣類などを積む人々。ボリビアなど外国のトラックもあった=2025年5月13日午後3時41分、チリ北部イキケ、河崎優子撮影

 サンブラーナさんによると…

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