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高澤ろうそく店の大黒柱の横に立つ高澤久さん。周りには補強のための筋交いの木材が多数設置されている=2025年5月10日、石川県七尾市、筒井次郎撮影

現場へ 能登の文化財はいま(3)

 能登半島地震で被災した登録有形文化財がひとつ、今年3月に抹消された。

 石川県輪島市の日本海に面して設置された輪島験潮場(けんちょうじょう)だ。元々は、明治期に国内で最初に整備された6カ所の潮位観測施設のひとつ。昭和初期に現在の場所に移転し、「能登に残る最初期の近代建築として貴重」として、鉄筋コンクリート造りの建物が登録された。

験潮場、地震の発生時刻まで観測

 しかし、地震で裏山が崩れて土砂の下敷きに。5月に訪れた時は、崩れた岩が散乱して建物は確認できなかった。

 後日、国土地理院に確認すると、最後の観測は「2024年1月1日16時10分30秒」。地震の発生時刻とほぼ同じだった。

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能登半島地震で崩れた岩に埋もれた輪島験潮場の跡=2025年2月14日、石川県輪島市、筒井次郎撮影
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被災前の輪島験潮場=石川県輪島市教育委員会提供

 登録有形文化財の制度のきっかけのひとつは、1995年の阪神・淡路大震災だった。文化財に指定されていない近現代の貴重な建物が次々解体され、保護を求める声があがった。

 登録は翌96年に始まった。対象は一定の評価を得た築50年以上の歴史的建造物で、民家や商店など身近な分野にも広がった。

 能登半島の七尾市には、登録有形文化財が10軒も集まる地域がある。築100年前後の老舗商店が並ぶ一本杉通り周辺だ。すべてが被災した。

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能登半島地震で被災した高澤ろうそく店=2024年1月2日、石川県七尾市、同市教育委員会提供

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 5月上旬。全壊した高澤ろう…

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