東京都板橋区にある築40年超の7階建て賃貸マンションで、家賃を2倍以上にするという通知が突然、住民に届いた。次にはエレベーターが「修理中」となり、使えなくなった。退去せざるを得なくなった住民もいる。何が起きているのか。
このマンションに住む50代男性の郵便受けに今年1月下旬、1枚の紙が入っていた。「家賃値上げの通知書」。現在は7万2500円の家賃を、8月分から19万円に値上げするという。約2.6倍だ。理由は「公共料金をはじめ諸物価の上昇に伴い、諸費用が増加」と記されていた。
「通知書」には、賃貸借契約を結んだ会社ではなく、見知らぬ社名があった。数日後、マンションの所有者の変更を知らせる封書が届いた。「新所有者」には、通知書にあった会社名と押印があった。
「こんな極端な値上げが認められるのだろうか」。不安を抱えた男性は宅建協会の相談窓口で尋ねた。値上げには貸主と借り主の合意が必要で、合意がなければ現状の家賃が維持される。合意できなければ裁判などで決めることになるが、相場を大幅に上回る値上げは基本的に認められないという。
物価高や周辺の物件の相場を考慮し、値上げは1.2倍程度までが妥当と聞き、男性は家賃の改定を拒否する文書をオーナー企業宛てに送った。
男性が周囲に聞いたところ、値上げの通知書は全戸に入っているようだった。いずれも約2~3倍となる19万円への値上げだった。
夜に突然、訪れたオーナー 言ったことは
オーナー企業の登記簿を見ると、本店は東京都江東区のマンションの一室とあった。不動産売買のほかインターネット関連事業、書籍、金融、飲食などの事業が並んでいた。「代表社員」として中国人らしき氏名と中国遼寧省の住所が記載されていた。
2月中旬の午後8時半ごろ。オーナーを名乗る男性が、住民女性の部屋を突然訪ねてきた。片言の日本語でこう言ったという。
「家賃の値上げを知っていま…