Smiley face

連載コラム「日曜に想う」 朝日新聞コラムニスト・山中季広

写真・図版
涼味あふれる冷ややっこ=岩田正洋撮影

 先日見た韓国ドラマ「シスターズ」に興味深い場面があった。拘置所から釈放された女性に、出迎えの妹らがサイの目に切った豆腐を差し出す。姉は立ったまま口に運ぶ。

 映画「親切なクムジャさん」にも豆腐が登場した。出所した主人公に出迎えの男性が1丁を丸ごと皿に載のせて掲げる。女性は「余計なお世話です」と豆腐を地面へ落とす。

 韓流通の知人に聞くと、豆腐は「これからは真っ白な心で生き抜いて」との願いを伝える食材だとか。素直に食べるのは更生に向けた誓いであり、拒むのは冤罪(えんざい)など物語の不穏な先行きを暗示するらしい。

 日本の拘置所なら、社会部記者だった私もたびたび通ったが、門の前で皿に載のった豆腐を目にしたことはまったくない。韓国の豆腐にそんな意味があったとは……。

 「読む新聞はガーディアン。食べるのは豆腐。そういう連中のせいで橋が通行止めになった」。英誌エコノミストは今年2月、英下院における驚きの閣僚発言を紹介した。

 保守党トラス政権の内相だっ…

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