(14日、全日本大学選手権準決勝、東北福祉大8―5青学大)
「打った瞬間、入ったかなという感じでした」
六回、強豪・青学大を相手にさらなる点差が欲しい場面で、東北福祉大の佐藤悠太(3年)が第4打席に立った。
直球だけを狙っていた。内角を振り抜くと、バックスクリーンの上段まで届く2ランに。8―4と突き放し、相手の反撃の機運をしぼませた。先制適時打を含む4安打3打点という結果に、「公式戦では初めて」と笑顔を見せた。
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原点は安打への喜び 「野球を始めたときのよう」
兵庫・報徳学園高出身。投手だったが、思うように目標に投げられなくなる「イップス」を発症。出番は得られず、投手は高2秋に諦めた。当時、野球は高校までだと感じたこともあった。
野手に転向してみると、違った光景が見えた。ヒットが打てると気持ちがたかぶった。「初めて野球を始めたときのような気持ちになれた」。最後の夏は背番号20だったが、大学でも野球を続けることにした。
高校までの経歴に自信はなかったが、「(大学に)入ったらスタート地点は同じ」と思い直した。下級生のときにウェートトレーニングで体を追い込み、入学時よりも10キロの増量に成功。パワーが増し、3年からレギュラーの座をつかんだ。
「今は自分の成長が楽しくて、失敗しても次頑張ろう、と思えています」。高校時代の回り道を経て、目先の結果より過程に重きを置けるようになった。あの時の挫折を、無駄にはしなかった。