Smiley face
写真・図版
東北大の和田陽一講師は、長年使い慣れた実験室で研究に取り組む=仙台市

現場へ! 医学研究 日本の実相(1)

 「考え続けられる時間ができてうれしい」

 東北大の和田陽一講師(40)は実験台を前にこう話す。4月、同大に新設された医学イノベーション研究所(SiRIUS)に研究室主宰者(PI)として採用された。

 前職の助教時代は、まとまった研究時間が欲しいと痛切に感じていた。東北大病院小児科で「代謝異常」の外来を1人で週3回担当した。生まれつき、特定の酵素の働きが悪く、必要な物質が作れなかったり、毒物がたまったりする患者が東北全体から集まる。まれな病気が多く、保護者への説明も時間がかかりがちだ。

 週に1、2回は「採血当番」をこなした。小児科外来で血液検査が必要な子どもの採血だけを半日続ける。当直も回ってくる。地域医療への貢献と生活費のために、外の病院で働く日もあった。

 診療以外の業務も多い。研修医の指導やリクルート、学会の委員会の活動やセミナーでの講演。研究費の申請やさまざまな事務書類の作成……。

 夜7時頃、実験室に戻る。研究できない日がはさまると、前に考えていたプランを思い出すところから始める。

厳しい環境思い知った米国留学

 「朝から晩まで続ければ1日で終わる実験が、分断されると何倍もかかる。その間に酵素が変性して、最初からやり直しになることも。本当に効率が悪かった」

 何度も悔し涙をのんだ。

 力を入れていたプロジェクト…

共有