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弁護士の川端和治さん。2007~18年に放送倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会の委員長を務めた

 総務省が4月、フジテレビに厳重注意の行政指導をしました。大臣名で社長に手渡された文書には、報道機関として社会的責任に対する自覚を欠いているとの厳しい言葉が並び、再生に向けた取り組みの状況を報告するよう求めています。自主自律が原則のはずの放送局に対して政府がこうした指導をすることをどう考えるべきか。放送倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会で長く委員長を務めた弁護士の川端和治さんは、危うい事態だと警鐘を鳴らします。

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 ――フジに対して、総務省が厳重注意などの行政指導を繰り返しています。どうみますか。

 「まるで当然のことのように行政指導をしていますが、政府による放送事業者に対する支配をさらに強化しようとする動きであり、放送の自由を萎縮させかねないと懸念しています」

 「放送法は放送事業者の自主自律による自由を保障しています。しかも今回の事案は、フジが、放送事業者に限らず全ての企業が順守すべきガバナンス(企業統治)の基本を怠ったために発生したのですから、総務省が口を出すべきではないはずです」

 ――しかし電波を預かって公共性の高い事業を行っている企業で深刻な統治不全が露呈した以上、所管官庁は放置できないのでは。日本民間放送連盟の早河洋会長(テレビ朝日会長)も注意されたことについて「やむをえない」と発言しています。

 「今回のケースは根深いジェンダーバイアスがかかった企業文化が温存された企業で発生した深刻な人権侵害であり、さらにその重大性を経営陣や幹部が理解・認識できなかったために二次被害まで生じさせたのですから、視聴者・広告主あるいは株主や社員から批判を受けるのは当然です」

 「しかし、放送行政を担う総務省が行政指導をするのは全く意味が異なります。総務省設置法の任務規定にも放送法にも、政府が民間放送事業者の人権順守などの内部統制にかかわるガバナンス不全に口を出せる根拠規定はありません」

 「その権限がないにもかかわらず、民間放送事業者の内部統制についても総務省が指導できるとの認識を表明しているのです。私は妥当だとは思いません」

すでに制裁が効いている

 ――放送局がいったん免許を得てしまえばどんな経営をしても許される、行政が歯止めをかける必要はないということでしょうか。

 「今回の推移をよく見てくだ…

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