2018年の第100回記念大会2回戦、済美(愛媛)が星稜(石川)を破った試合は延長十三回、13―11のスコアで2時間55分と3時間を切った。
この大会から、十三回以降、無死一、二塁から攻撃するタイブレークが導入された。9―9で迎えた十三回、先に2点を失った済美の裏の攻撃は、無死満塁となって1番の矢野功一郎を迎えた。
左打者が右翼へ放った大飛球。ただ誰もがファウルだと思った。打った矢野は一塁手前で足を止めた。ところが、右から左へ吹く甲子園特有のはま風でフェアゾーン方向へ流される風のいたずらが起こった。
右翼ポールに直撃する、大会史上初の逆転満塁サヨナラ本塁打が、タイブレークの中で飛び出した。
「頭が真っ白になった」と殊勲の矢野は振り返った。「自分が打ったんじゃないみたい」と夢見心地のダイヤモンド一周になった。
めまぐるしい試合だった。星稜が一回に5点を先行し、終盤まで大量リード。済美は八回に8点を奪って逆転し、九回に星稜が2点を取って追いついた。
劇的な勝利で勢いづいた済美は、準決勝まで勝ち進み、優勝した大阪桐蔭(北大阪)に敗れた。
星稜は済美戦で2年生の奥川恭伸(現ヤクルト)が先発登板。好投しながら、四回に右足がつって降板した。だが、翌年の大会で母校を準優勝に導いた。