和歌山県の高校野球部員が、特別支援学校とスポーツを通じた交流を深めている。その先頭に立つ一人が、今春の選抜大会にも出場した市和歌山(和歌山市)の半田真一監督(45)。夏の甲子園を目指して追い込む時期に、練習時間を削っても交流に取り組みたい理由があった。
知的障害と肢体不自由がある児童生徒が通う和歌山市の県立紀伊コスモス支援学校。5月中旬、ユニホーム姿の市和歌山の野球部員61人が到着すると、「来てくれてありがとう!」「甲子園かっこよかったで!」と大喜びで出迎えられた。
来訪の目的は、高等部の生徒と軟らかいボールやバットを使ってゲームなどをする「交流会」。キャッチボールでは「ナイスボール!」と積極的に声をかける。バッティングで高等部の生徒がいい当たりを飛ばすと、野球部員が車いすを押してダイヤモンドを一周。ホームインすると両校から大歓声がわき上がった。
「ええ光景ですわ。みんなが輝いている」。両校の生徒たちが盛り上がる様子を見守っていた半田監督が目を細めた。
野球で頂点を目指し、日々しのぎを削る部員にこそ、支援学校との交流を通じ学んでほしい大切なことがあるという。
「資本主義の世の中なので勝ち負けはつきもの。競争は人ががんばるエネルギーにもなる。ただ勝利至上主義に偏ると、野球のうまい、下手だけで人間を評価しがちになる」
交流会が終わり、部員らは「夏の甲子園がんばって!」との声援に送られながら学校を後にした。高等部3年の土井健汰さん(17)は「本当に楽しい時間でした」。川辺謙信主将(3年)は「野球を教えよう、ではなく自分たちが積極的に楽しむように心がけた」と話した。
監督の目標は甲子園、そして…
半田監督が2012年に市和歌山の監督になった時、二つの目標を掲げた。一つは甲子園出場。夏は3回、春は5回、チームを甲子園に導いた。
もう一つ、心の中で目標とし…