福島県いわき市立遠野小学校は16日、日本救急医学会が認定した心肺蘇生法の専門講師を招き、教員らに救命処置の講習会を開いた。少子高齢化がすすむ中山間地域にあり、学校統合で児童数が急に増えた同小。専門講師は「特に中山間地域では、教員みんなが救命処置の技能を身につけていることが重要」と意義を強調する。
同小は昨春、入遠野小が上遠野小へ吸収されるかたちで統合・誕生し、児童数は約1・5倍の約150人に。ただ、教員は主に学級数に応じて配置されるため、学級数が増えなければ、教員1人がみる児童数が増えるだけだ。遠野小では、最大1・5倍ほどに増えたという。一方、地元には消防署の分遣所があるが、救急車は1台しかない。
一般的に学校現場では、給食事故、プール授業での水難事故、校庭で遊戯中のけがや虫刺されなどへの対応が求められる。専門講師で日本DMAT(災害派遣医療チーム)隊員でもある常磐病院看護部の大垣竜一郎さん(53)は「心肺停止から2分以内に蘇生ができるかどうかが勝負。1人の教員が119番通報のため行ったり来たりしている間、救急車が着くまでの間に貴重な時間が失われる恐れもある。まず駆けつけた教員が、救命処置できる必要がある」と話す。
この日は、胸骨圧迫(心臓マッサージ)や人工呼吸、AED(自動体外式除細動器)を使った蘇生術に加え、食物アレルギーや虫刺されでも起きるアナフィラキシー症状に対応するため、エピペン(自己注射薬)の使い方も実習。教員たちは針のない練習用エピペンで握り方から教わり、位置や角度を確かめながら、自分の太ももに刺す練習を繰り返した。
菅野貴教頭は、「児童の安全を守るため『知っていること』を『できること』に高めたいと、プールの授業が始まるのを前にお願いした」。大垣さんは「コロナ禍以降、救急車が発熱患者を搬送すると検査終了まで待機することがあり、次の救急患者へ転戦する時間が遅くなる傾向がある。少人数で大勢の子どもをみないといけない先生方ほど、救命処置の技能を高める重要性が増している」と話している。