第29回手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)の贈呈式が5日に都内で開かれ、受賞者がそれぞれの個性豊かに喜びの言葉を語った。
マンガ大賞の「1秒24コマのぼくの人生」は、アニメーション監督りんたろうさんの自伝。仏語圏のマンガ「バンドデシネ」のスタイルをとって描かれた。
初めて挑む形式だったが、フランス在住のコーディネーターから「アニメの絵コンテのように描いたら」と助言を受け、筆が進み始めた。りんたろうさんは「全員の力で描けた本」として、「(賞は)みんなを代表してもらいたい」とあいさつを結んだ。
気鋭の才能に贈る新生賞は、「どくだみの花咲くころ」を描いた城戸志保さん。スピーチを担当編集者が代読した。
作品は、独自の創作物を生み出す小学生の「問題児」と「優等生」の関係性を描く。「他人の作ったものにグッとくる。そういう感情が原動力になって、自然とこのマンガを描くに至ったのだと思います」
短編賞の榎本俊二さんは、得意の下ネタを封じたファミリーコメディー「ザ・キンクス」で受賞した。
近年、ギャグマンガの読者減を感じるという。「ちんちんやうんちばっかり描いてきたような人間でも、まかり間違ってこういうところに呼ばれる。その事実が、今頑張ってギャグマンガを描いている若い人たちにとって、少しでも希望になるのでは」と語った。
特別賞は一般財団法人横手市増田まんが美術財団に贈られた。(照井琢見)