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写真・図版
ヘルシンキ市の写真バンク「Helsinki Material Bank」に収録されている写真©Jirina Alanko/ Helsinki Partners

メディア空間考 高重治香

 本紙オピニオン面で「欧州季評」を連載してきたヘルシンキ大学講師の朴沙羅(ぱくさら)さんと、記者サロンで語り合うことになった。

 申し込みページに載せるフィンランドの写真が必要になり、政府やヘルシンキ市の傘下の会社が運営する3種類の無料写真バンクを利用した。日本の自治体を含め、公的セクターが運営する写真バンクは珍しくない。主に旅行会社やメディア向けで、写真を使ってもらい、観光客誘致やイメージアップにつなげるのが目的だ。

 「季節」「撮影場所」などの条件を選ぶと写真が表示される。興味深かったのは、選択肢に「equality(平等)」「Inclusive Travel(包摂的な旅行)」「sustainability(持続可能性)」といった項目があることだ。

 例えば「平等」には、年代や性別が異なる人たちが語り合う写真が、「包摂的な旅行」には、車椅子での移動や、女性2人が身を寄せ合う写真がある。ジェンダー平等や包摂性といった価値が、視覚イメージの世界でも、食事や自然と並ぶ国の一種の「売り」として、選択できるようになっている。

 フィンランドという国に含まれる多様な出来事や人々の中には、こうした価値からこぼれ落ちる存在もあるだろう。朴さんの記事や本を読んで、そう想像はできる。それでも、腰の据わった「売り方」に、つい「さすが」と感心してしまった。

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たかしげ・はるか 「欧州季評」の編集を担当している。文化やメディアに関わる社説を書く論説委員。埼玉県のムーミンバレーパークは行ったことがあるが、北欧は未踏の地。

「記者サロン」視聴受け付け中 質問も募集

 朴さんと高重論説委員の記者サロン「フィンランドで考えた ナショナリズム・歴史・移民」(8月22日配信開始)は、視聴を募集ページ(https://t.asahi.com/wp3r)で受け付け中です。朴さんへの質問も6月中にお寄せ下さい。

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