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指導する堤尚彦監督=2025年6月17日午後3時58分、岡山県浅口市、上山崎雅泰撮影
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 〝チームコンセプト 世界に野球を普及する人材を輩出する!〟

 おかやま山陽(岡山県浅口市)の野球場のホワイトボード最上位に、力強く記されている。「甲子園出場は目的ではない。世界に野球を広める、という考えを知ってもらうための手段です」。2年前の2023年夏、甲子園でベスト8に導いた堤尚彦監督(53)は言い切る。

 異色の経歴の持ち主だ。高校球児として千歳(現・芦花)での最後の夏は、西東京大会を初戦敗退。進学した東北福祉大(仙台市)では4年生に金本知憲(元・広島、阪神)、同期に和田一浩(元・西武、中日)らがおり、厚い選手層に阻まれ、ほとんど試合に出られなかった。

 3年の頃、何げなく見ていたテレビ番組に感銘を受けた。アフリカの子どもたちに野球を教える日本人の話だった。「自分がやらなきゃ」とJICA(国際協力機構)に連絡。卒業後に青年海外協力隊としてアフリカ南部・ジンバブエへ向かった。

数千の贈りもの

 現地で2年間、子どもたちに野球を教えたが、ラグビーやクリケットが盛んな国。野球道具の確保もままならず、十分な指導ができずにもどかしかった。その後ガーナに1年赴任し、ガーナ代表を指導。帰国後はスポーツビジネスの会社で働きながら、海外に中古の道具を送り始めた。

 2006年におかやま山陽の監督に就任。開発途上国を中心に道具を送る活動は、11年から部の活動に位置づけた。今では広陵(広島)、明徳義塾(高知)など全国強豪校からの協力もあり、41カ国にバットやグラブを計数千点送った。19年には、高校の監督をしながら東京五輪アフリカ予選のジンバブエ代表監督を兼任した。

型にはまらず

 海外での数々の指導経験から感じるのは、今の球児は自ら考え、感じ、創造する選手が少ないということ。「家庭環境なのか、社会環境なのか、スマホの影響か分からないが指示を待つだけの選手が多い」。選手には、自ら気付き、自然に動き出せるプレーができるよう指導している。練習メニューはゴルフ、フットサル、卓球、将棋など様々な競技を採り入れる。

 井川瞭主将(3年)は「他よ…

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