Smiley face
写真・図版
イラン危機をよむ

編集委員・副島英樹

 米国がイラン核施設を空爆した翌々日、国際原子力機関(IAEA)のイラン代表は米国の攻撃を「違法な侵略行為」と非難し、核不拡散条約(NPT)に「回復不能な打撃」を与えたと述べた。

 「核兵器を持たれる前につぶす」。それが、イスラエルと米国が攻撃に踏み切った理由だ。国連安保理決議に基づかない武力行使だが、「自衛の予防攻撃だ」とし、トランプ米大統領は広島・長崎を例示して「戦争を終わらせた」と正当化する。先に核を手にした者が優位に立つという冷酷な現実を突きつける。

  • 【連載第2回】非核化への道さらに険しく 米のイラン核施設攻撃、北朝鮮はどう見た
  • 【連載第3回】揺らぐ「法の支配」 日本は国際社会の信頼を勝ち得る国家像の提示を

米国が、イスラエルに同調する形でイランの核施設を攻撃しました。トランプ米大統領はイスラエルとイランの間で停戦が合意されたと発表しましたが、中東の混迷は続いています。世界にどんな影響があるのか。各地から記者が展望します。

 世界191カ国・地域が加盟するNPTは、国際社会が核の不拡散や軍縮を進める基礎となるものだ。しかし、今回の事態はNPT体制の弱点を露呈させた。核兵器の保有を米ロ英仏中だけに限る一方、原子力の「平和利用」は加盟国に認めるNPTは、もともと平等性に欠けるともいえる。

 イスラエルはそもそもNPT…

共有