公立学校教員の死をめぐり、遺族と行政の間で訴訟が続いている事例もある。
2021年11月12日午前5時頃。
女性は目を覚ました。風呂からシャワーの音が聞こえた。
ただならぬ気配を感じて扉をあけると、夫(当時40)が倒れていた。体が冷たい。既に亡くなっているのがわかった。死体検案書では「急性心臓病疑い」とされた。
夫は福岡市立小学校の主幹教諭。児童数が1千人近い大規模校で教務主任をしていた。学校の教育指導計画を立てて日々の授業時数を管理し、行事の日程調整をするなど重要なポストだ。
加えて、この年の1学期に、ある学級の担任代行になった。病休の教員が出たからだ。2学期になると別の教員が産休に入り、今度はこの学級の担任代行になった。忌引や病気で休んだ教員の学級で学習指導にも当たった。
女性によると、週末、日中に子ども2人と遊んだ後、終わらない仕事をこなすために学校に向かう日もあったという。
亡くなる前月は顔色が悪く、とても疲れた様子だったが「休むことなく学校に行っていた」と女性。「もう少し体と家庭を大切に」と言ったが、夫は何も言わなかったという。
夫の死は、症状や勤務状況から「公務上の災害」とされた。地方公務員災害補償基金福岡市支部の認定通知書によると、発症前30日間の時間外勤務は計95時間40分、その前の1カ月も97時間45分に達した。
告別式の日。次男は号泣していた。長男は父親が荼毘(だび)に付されるとき、誰にもわからないように泣いていたと後で聞いた。
教務主任だった男性は、亡くなる直前に多くの仕事を抱えていました。なぜ過労死するような事態になったのか。裁判記録や取材から考えます。
女性も小学校教員だ。一昨年…