地域の人たちからも応援してもらえるチームになりたい――。そんな思いから始めたのは、地域のごみ拾いだった。
彦根工業高校(彦根市)の硬式野球部。毎週1回、学校からJR河瀬駅まで歩き、ごみを拾っている。往復で約30分。練習の前などに行っている。
始めたのは昨夏から。滋賀大会の初戦でコールド負けして3年生が引退。向上心をもって練習し、地域の人たちからも応援してもらえるチームになろう、と考えた。
6月22日の朝。選手たちは学校で行う練習試合の前に、火ばさみやごみ袋を持って、道路や側溝などに落ちたごみを拾っていた。松宮凛空(りく)選手(3年)は「すれ違う人が『ありがとう』と言ってくれて、応援されている感じはしている」。
学校にも「ありがとう」と電話がかかってくるという。記者が地域を取材したところ、選手たちによるごみ拾いを認知している人はおり、ある女性は「いいことをしてくれてはる」と話した。
地域に住む男性(71)は選手の祖父で、練習試合を見に訪れた。孫ら部員たちがごみ拾いをしていることはもちろん知っており、「小さなことをコツコツ続けていたら、野球のほうにも生きるかもしれないね」とほほえむ。
部員は15人で、3年生は松宮選手と小林健介主将の2人しかいない。昨秋の県大会は、初戦で選手が負傷したが交代選手がおらず没収試合になり、今春は初戦敗退した。
7月6日に開幕する第107回全国高校野球選手権滋賀大会。「ここまでがんばってきたので長く続けたい」。チームのことを真剣に考えてきた小林主将の思いは強い。