もうすぐ始まる夏休み。
夏休みの宿題を計画的にこなせずに、最終日に泣きを見た経験はありませんか。
子どもの宿題もさることながら、大人だってえらそうに言えません。夏休みのレジャーの計画を毎年うまく立てられない、という声も聞きます。
夏休みの宿題の計画立ては別の機会に詳しくご紹介しますので、今回は、やりたいことを実現するレジャーの計画の立て方について書いてみたいと思います。
- 連載「上手に悩むとラクになる」
早い人だと1年前からキャンプ場や飛行機を予約して計画を立て始める一方で、職場から無理やり夏季休暇の時期を決めろと言われてしぶしぶ取得したものの、何をしていいかわからず、いざその日に向けてマッサージでも受けに行こうと思ったら予約でいっぱい、どこのレストランも入れない……。仕方がないから家でカップ麺を食べていつもと同じようにテレビを見ていた、なんて話も聞きます。
旅行に行くのが全てではないですが、やりたいことを実現するための計画力はもちたいものですよね。
私はもともと計画力とは正反対の人生を歩んでいました。
学生時代は、全く計画通りに勉強なんてできないし、特に書類の手続きは苦手なので、ありとあらゆる提出物を出せずにいました。
大学生時代に友達と行く旅行の計画も、全部人任せ。旅行日当日まで荷物の準備すらしていなくて、当日着て行きたかった服の洗濯が終わっていない、出発時間ギリギリまで寝ていた、みたいな有り様でした。ひどいですよね。
そんなふうでしたので、いまだに行き慣れていない土地への出張はひどいストレスです。旅行欲は全くないので、事前準備が苦行でしかないのです。
夏休みの旅行の計画も、直前まで家族の予定が決まらないこともあり、毎年行き当たりばったり。それでも別に不満はないのですが、子どもにたまにはスペシャル体験をさせてあげたいなとも思っています。
では、どのようにレジャーの計画を進めていけばいいでしょう。
帰省、夏期講習、パートの調整…計画どうする?
注意欠如多動症(ADHD)の主婦リョウさんと娘さんもまた、計画力の低い親子です。
リョウさんは、帰省のための調整を先延ばしにしていますし、子どもの塾の夏期講習をいつにすべきか悩んでいます。また、8月はちょうど車検の時期なので、はやくどこで出すか決めないといけないし、車の使えない時期があるかもしれないことと、車を使った旅行の時期をいつにするのか連動していて、考えるのが難しいなと感じています。また、パートの休みの調整も絡んでくるのでより複雑です。
娘もまたいろいろ大変です。
いつも夏休みの残り2日間で、バタバタと家族総出で宿題に追われるパターンです。去年は家族旅行が通っている小学校の夏祭りと重なってしまったことで、「友達と行きたかったのに!」と非常に悔しい思いをしました。
去年の夏休み最終日の夜には「明日新しい雑巾がいる」と大騒ぎした記憶もあります。
こんなふうに夏休みのレジャー計画をめぐるいろんな要素があって、簡単ではないのです。
では、どうしたらいいのか。
計画を立てるには、コツがあります。次の3ステップで進めてみましょう。
ステップ①夏休みのレジャー計画を決める日を決める
長期的な計画を立てる時間をとろうと思っても、日々の差し迫ったタスクに簡単に負けてしまいます。
そうならないように、まずは計画を立てる日を決めます。もうすぐ夏休みですから、できるだけ早めの日がよいですね。
計画立ては、早いにこしたことはありません。できれば、人気レジャー施設や人気路線を狙うファミリーなら「正月に家族で話し合う」というのもおすすめです。それを恒例行事にしてしまうのです。
たとえば家族で必ず初詣をする習慣のある場合には、お参りするときに「今年の夏休みは〇〇へいってみたい」など願望を口にするのはどうでしょうか。
夏休みの計画立てなのだから、何も年明けからしなくてもと思うのですが、日本では年度末や新年度に非常に多くの変化や行事が組み込まれていて、毎年結構忙しいと思いませんか?
正月休みが一番みなさんゆっくりしているように思うのです。
とはいえ、いまはもう7月。リョウさんは次の土曜日に、計画を決めることにしました。
ステップ②おしりの決まったものから一つずつ決めて大枠を整える
リョウさんと娘さんの夏休み計画の課題は、あまりに多いですよね。
あれもこれも決まってなくて、それぞれが連動しているのです。
こういうときには、ひとまず締め切り順に並べて、締め切りが決定しているものから楔(くさび)を打ち込んでいって、輪郭をはっきりさせましょう。
ぼやぼや、もやもやーーーっとしていた計画も、やっと大枠が決まります。
リョウさんの家の場合には、車検はわかりやすい期限がありましたし、帰省は実家の都合もありますが、塾の夏期講習はだいたいどこもお盆は休みなので、そのあたりで帰省することにしました。
車検は予約が早いほど代車もレンタルできたり、割引があったりします。最安値を狙うために情報検索に時間を費やしすぎるよりも、近所であること、代車が借りられること、夏期講習のときに車で送迎ができるように7月半ばまでに車検が終わることを条件にいくつか当たってみました。これが決まると、ひとつ確定しますね。
実家の帰省もぼんやりと「お盆のいつか」ではなく「◯日」と決めたことで、親もリョウさんたちも予定を組みやすくなりました。謎の「まだはっきり決めなくていいね」という先延ばしはあまり役に立たないものです。
ステップ③大枠の中に、譲れないものを入れ込む
大枠が決まってこそ、実際に使える時間が見えてきます。その期間に「今年の夏こそやってみたいこと」を入れていきましょう。
リョウ「夏期講習をいつにするか問題はあるにはあるんだけど、うちは中学受験もしないし、小学生最後の夏休みだからこそできる体験をさせてあげたいな。もし……娘が望めばだけど、海外に行きたい!」
出ましたね。リョウさんがこんなに願望を口にしたのは、これが初めてでした。
日々に追われていて、そんな願望、自分でも忘れていました。
夫「なら、もうここは思い切って、夏休みの勉強はオンラインの講習か自習に振り切って、海外に行ってしまおうか」
リョウ「でも夏休み中の海外旅行なんて、飛行機代がすごいのでは」
夫「でも来年からは部活とかで、お金を積んでも行けないかもよ」
キリギリス体質の夫らしい発想ではありますが、リョウさんはワクワクしてきました。
娘「行きたい! 絶対行きたい!」
いいかんじですね。
ポイントは締め切りのあるものから大枠を決めて、そこにやりたいこと(重要度の高いもの)など詳細を入れ込んでいくことです。みなさまもよい夏休みを計画してみましょう!
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このコラムのような意思決定の方法について筆者が解説した本が新しく出ました。
「マンガで挑戦とっちらかった頭の中を整理して決められる人になる」(中島美鈴著・あらいぴろよ絵 主婦の友社)
https://books.shufunotomo.co.jp/book/b10136505.html
〈臨床心理士・中島美鈴〉
1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。