(5日、第107回全国高校野球選手権茨城大会1回戦、太田西山11―0茨城高専・笠間=7回コールド)
六回裏2死一、二塁。茨城高専・笠間の3番打者の加藤倖太(2年)が打席に立った。チームはそれまで無安打に抑えられている。
バットを指2本分短く持った。「なんとしてでも、ヒットを打ってやる」。初球の高め直球を振り抜き、空を見上げた。遊飛に終わった。ただ、心がけていた通り、甘い球を見逃さず、フルスイングを貫けた。
笠間に進学し、野球を始めた。中学までは柔道部。一昨年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の準決勝でのサヨナラ勝ちを見て、野球をやりたくなった。
今春に1年生が加入するまで部員は1人だった。連合チームでは責任教師を務める、笠間の菅谷優樹監督(29)と二人三脚の練習を続けた。毎日、帰宅後に1時間の素振りは欠かさなかった。「部をやめようと思ったことはない。野球って楽しいから」
七回の守りで二塁手が足をつり、守備位置の一塁から歩み寄って「大丈夫」と声をかけにいった。5月に連合を組み始め、「大事な仲間」と思っている。
チームは七回コールド負け。捕球など課題は多いと感じた。「試合ができてチームに感謝です。最高でした」。ニコッと笑った2年生は、来夏を見据えた。