それぞれの最終楽章 余命1年と言われて(8)
看護師・朴明子さん
がんになったことをきっかけに、人前で講演する機会が増えました。最初は2020年11月の、園田学園女子大(兵庫県、現園田学園大)での講演でした。がんがわかる前から非常勤で勤務させていただき、お世話になっていた大学です。ちょうど少しずつ仕事に復帰し始めた頃でした。「患者としての経験を、看護学生に話してみませんか」。そう声をかけていただいたのがきっかけでした。
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講演の内容は、大学や高校の学生を対象としたものもあれば、一般市民向けのものもあります。医療者や患者さん、ご家族向けのものもあります。これまで10回以上、お話しする機会をいただいてきました。
最初のころは内容を考えるのが難しくて、時間がかかりました。講演が近づくと、とても緊張しますし、今でも話す前は焦ります。でも、自分の状況を言語化することの大切さを感じるようになりました。自分のことを言葉にするのは、怖さもあります。しかしそれ以上に、自分の心の奥にあったものが少しずつほどけていくのを感じるのです。見栄を張らず、正直に言葉にして吐き出すことで、楽になる感覚があります。講演のあと、聴衆の方が涙ぐみながら駆け寄ってきて、励ましてくださることもあり、その一言一言が私の力になっています。
そしてもうひとつ、大きな気…