原子や電子といった小さな世界のルールを説明する「量子力学」が誕生して、今年で100年になる。その節目に、一般の人にも興味をもってもらいたいと、日本物理学会が量子フェスというイベントを開いた。目玉は「量子の世界を体感できる演奏会」。難しそうな物理の世界を、音楽で体感するってどんな感じだろう。
6月14日夜、東京都江東区の日本科学未来館。頭上にシンボル展示の地球ディスプレーが輝く1階ホールで演奏会は開かれた。中央には指揮者とオーケストラ。その周りで約200人の観客が静かに開演を待っていた。
記事の後半で演奏会の一部を動画で紹介します
私たちの体も宇宙も力も、突き詰めれば……
量子力学とは、目には見えない小さな世界を理解する枠組みだ。分子や原子、さらに小さな素粒子などの領域に入ると、目に見える世界の「常識」が通用しなくなる。ものが「粒」と「波」両方の性質をもっていたり、観測するまで状態が定まらなかったり、不思議なことが起こる。
いまから100年前の1925年、ドイツの物理学者ハイゼンベルクが、この小さな世界の物理法則を記述する方法を提唱し、量子力学が生まれた。
- 量子力学100年「産業化の時代に突入」山本貴博・東京理科大教授
素粒子とは、ものをつくる最小単位。これ以上分割できないと考えられるもののことだ。原子は原子核と電子から、原子核は陽子と中性子からできている。さらに陽子と中性子はクォークという素粒子からできている。電子や光の粒である「光子」も素粒子で、量子力学に従う。
素粒子は17種類見つかっている。それらが組み立てブロック玩具のように、くっついたり離れたりしながら、私たちの体も、目に見える範囲の宇宙もほぼできあがっている。
力も、素粒子によってもたらされている。マグネットでチラシを冷蔵庫にくっつけたり、走る車にブレーキをかけたり。身の回りのさまざまな力も、突き詰めれば4種類に分類できるという。
電気や磁気をもつものが相手を引きつけたり遠ざけたりする「電磁気力」、原子核の中で陽子と中性子をまとめる「強い力」、中性子が陽子に変わるように小さな世界で変化を引き起こす「弱い力」、地球が月を引きつけるように質量をもつものが相手を引きつける「重力」の四つだ。
それぞれに対応する素粒子があり、それらが行き来することで力が伝わると考えられている(重力を伝える素粒子は未発見)。
物理学者たちは長年の研究で、素粒子の振る舞いをほぼ正確に記述できる数式を編み出してきた。
物理学者と音楽家がコラボ、五線譜に書いた数式
「宇宙を支配する数式」。京…