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田中祥貴さん

 「衆院のカーボンコピー」と言われ、いま一つ存在感が薄い参院。投票先と一緒に、未来に向けて「参院2.0」への改革案も考えてみたいものです。参院を「憲法の守護者」に――と提唱している憲法学者の田中祥貴さんに話を聞きました。

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 私は参院に「憲法の守護者」の役割を持たせる改革を提唱しています。

 10年前の安保法制の成立過程への疑念が出発点でした。それまで一貫して違憲とされてきた集団的自衛権が、政権が代わると融通無碍(むげ)な憲法解釈の変更によって合憲とされました。与党にも見識ある議員は少なくないのに、党議拘束のせいで埋没して、審議には反映されません。こんな政治が許されるなら、立憲主義が損なわれてしまう。憲法保障のあり方に強い疑問を感じました。

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田中祥貴教授が参院改革を考える契機になったのは、2015年の安保関連法案をめぐる審議過程への疑念だった。写真は参院特別委で採決をめぐってもみ合う与野党の議員ら=岩下毅撮影

 憲法を守る存在として日本でまず思い浮かぶのは裁判所ですが、裁判所は具体的な事件なしに抽象的な違憲審査を実施できません。抽象的な違憲審査を行う機関としては内閣法制局がありますが、あくまで内閣から独立した存在ではなく補助機関に過ぎませんので、十分な統制は期待できません。

 これらを補完する役割は、権力分立の原理から、国会が担うべきでしょう。議院内閣制の下では衆院は内閣と一体の存在ですから、参院に期待せざるをえません。それは「良識の府」にふさわしい役割でもあるはずです。

 国会の二院制は本来、両院の間で抑制と均衡を働かせ、多数派の暴走を抑えるための制度です。連合国軍総司令部(GHQ)が一院制への改編を考えていたのに対し、憲法問題調査委員会(松本委員会)が「抑制と均衡」を理由の一つに挙げて二院制を主張した経緯があります。軍部が暴走し民意を操作・過熱させ戦争をした歴史を持つ私たちにとって、抑制と均衡を保障する仕組みは不可欠だと思います。

 しかし現実は、想定通りに機…

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