「時給10円」――。米価が高騰する前、コメ農家の収入がそんな風に言われることがあった。農林水産省の統計をもとに算出した金額とされるが、実際はどのような「懐事情」なのか。北陸地方で農家向けに経営コンサルタントとして働き、農家の経営に詳しい男性が匿名を条件に取材に応じた。
男性が勤める会計事務所と契約しているコメ農家は、法人と個人を合わせて計約100軒あり、耕作面積が30ヘクタール以上の大規模農家が中心だ。男性は「赤字の農家は全体の2割程度。個人経営ではほとんどみられない」とし、「赤字だとしても決算書上の数字が必ずしも実態の苦しさを示すわけではない」と言う。
広い平地といった条件の良い農地で効率的に作業を行うとともに、小規模な労働力構成で人件費を抑えることで「役員報酬を1千万円に設定しても黒字を生み出せている農業法人もある」と男性。どの農家も「時給10円」という極端な低収益のイメージは、「誤解ではないか」と話す。
米価高騰は卸も農家も恩恵
主食用米だけを作る農家はお…