敗戦直後、旧満州(中国東北部)で開拓団を襲撃から守るため、旧ソ連兵に「性接待」をした女性たちを描いたドキュメンタリー映画「黒川の女たち」が12日から全国で順次公開される。監督でテレビ朝日社員の松原文枝さん(58)は、歴史に向き合う大切さを訴える。
岐阜県の旧黒川村(現・白川町)に「乙女の碑」と言われる石像が立っている。1982年に建立されたものだが、その隣に立つ碑文を記した説明板は建立から36年後の2018年にできたばかりだ。
碑文が伝えるのは、村から旧満州に入植した黒川開拓団の「負の歴史」だ。開拓団は終戦後の1945年9~11月、現地住民による略奪や暴行から保護してもらう見返りに、旧ソ連兵に17~21歳の未婚女性約15人を差し出した。
引き揚げ後、性接待の事実は元団員の中で伏せられ、女性らは周囲からの誹謗(ひぼう)中傷にも苦しんだ。現地で亡くなった4人の慰霊のために石像が建てられたものの、由来を説明する碑文はなかった。
映画では、戦後70年近くが経過してから実名で被害を告白し始めた女性たちと、それをきっかけに説明板を作ろうと動いた開拓団の遺族会の姿を描く。
松原監督は2018年から、黒川開拓団の取材を続けてきた。碑文の完成を伝える、2分ほどのニュースを放映したことがきっかけだった。
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