Smiley face
写真・図版
銀座のクリニックで、診察時に使う拡大鏡を手にする村松英之さん=東京都中央区、横関一浩撮影

 クリニックを訪れる年間約3千人の患者のうち、10人に1人はリストカットなどの自傷の痕がある。その9割が女性で、20~30代が中心だ。薄着になる春から夏にかけて、特に増える。

 「半袖が着られない」「人の目が怖い」。自傷痕を目立たなくしたいという思いに応える前に、心の状態を確かめる。

 「なぜ自傷したのですか」「将来どうなりたいですか」。ときには治療を断ることもある。でも、決して自傷したことを非難したり、語ったことを否定したりしない。

 形成外科は、けがややけどの痕、ほくろやあざ、先天性の疾患など、体の表面に生じた異変を正常に近い状態へと治療する診療科。村松英之さん(50)は大学卒業後、各地の病院で約15年間経験を積むなどした後、2017年に東京都江東区豊洲に「きずときずあとのクリニック」を開いた。

 自傷痕の治療は基本、公的医療保険が適用されない。勤務した病院は保険診療ばかりで、自傷痕を治療することはなかった。

 クリニックでは、治療の幅を広げるために、多くが自由診療となるレーザー治療を導入。自傷痕のある皮膚に無数の穴を開け、全体を平らにして傷痕を目立たなくする治療も行う。

 19年からは、自傷痕がある…

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