100円トレカ「蟲神器」(後編)
100円ショップ・ダイソー発のトレーディングカードゲーム「蟲神器(むしじんぎ)」。1千万セットを売り上げる人気商品を企画したのは、ダイソーを展開する大創産業の子会社、大創出版だ。そして、蟲神器の誕生には、その大創出版の西田大社長(51)とNIZA(ニザ)の名で活動するゲームデザイナーの出会いがあった。
最初の提案は…
「トレカを作れる人を探している。興味ない?」
アナログゲームの祭典「ゲームマーケット」で、趣味として自作のトレーディングカードゲームを「細々と」販売していたNIZA氏。2019年ごろの秋、東京ビッグサイト(東京都江東区)の会場で、西田社長から突然のスカウトを受けた時は半信半疑だった。
- 100円トレカ「蟲神器」開発の舞台裏、「前編」はこちら
すでに有名なゲームデザイナーは、世に数多くいる。商品化の可能性は「高く見積もっても1%あるかないかだと思った」。それでも早く行動すれば熱意が伝わるのではないかと考え、会場の東京ビッグサイトから栃木県にある自宅に戻ると、その日の深夜には企画書を西田社長に送った。
すると翌朝、早速連絡がきた。「今度会社に来てください」
最初にNIZA氏が提案したのは、ダークファンタジーがテーマのトレカだった。多くの人を引きつけるテーマとしては王道で、ダイソーにもマッチすると考えたという。
だが、西田社長はその案に難色を示した。「実在するものをテーマにしたほうが、すでにそのもの自体にファンがたくさんいるからよいのでは」
みつけた業界の空白地帯
NIZA氏はリサーチを重ね…