みなさん、血圧をはかりましたか? 今回は「血圧と運動」がテーマです。運動には、血圧を下げる効果がある、ということはみなさんうっすらとイメージがわくのではないでしょうか。では、なぜいいのか。どんな運動を、どれくらいしたらよいのか。日本高血圧学会理事の三浦伸一郎・福岡大学病院長(心臓・血管内科学教授)に語ってもらいます。
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さて問題です。次のうち、血圧を下げる効果のある運動は、どれだと思いますか?
1)ジョギング
2)腕立て伏せ
3)短距離走
4)スクワット
答えは、3を除く全部です。
軽いジョギングや早歩き、水泳のような有酸素運動が、血圧を下げる、ということは古くから知られていました。
ところが最近、腕立て伏せやスクワットなどの筋肉を収縮させる運動(レジスタンス運動)も、有酸素運動と同じくらい、血圧を下げる効果があることがわかってきました。
有酸素運動では、上の血圧と下の血圧がそれぞれ7.9ミリHg、4.7ミリHg下がります。レジスタンス運動の場合も、上が6.4ミリHgほど、下が3.2ミリHgほど下がることが分かっています。
運動をすると、血圧を下げる効果がある。これには、ホルモンが関係していると考えられています。
私たちの体では、様々なホルモンが働いて、血圧を調節しています。運動をすると、血圧を上げる代表的なホルモン「レニン」や「カテコラミン」の働きが抑制されます。同時に、血管を拡張するホルモンや、利尿作用のあるホルモンの働きが強まり、血圧を下げる、と考えられています。
また、レジスタンス運動をすると、血管の細胞から一酸化窒素(NO)という物質が分泌されて、血管を広げる効果があることもわかっています。
「強度」もポイント 激しすぎると逆効果に
では、運動なら何でも、やればやっただけ効果があるのかというと、そうではありません。もうひとつ、運動をするときの大切なポイントに「強度」があります。
同じ「走る」でも、ゆっくり走るジョギングは血圧を下げますが、全速力で走る短距離走のような運動は、逆に血圧を上げてしまうため、血圧が高めの人にはおすすめできません。
運動をするときは、「楽だな」から「ちょっときついかな」くらいの強さを心がけましょう。体感としては、うっすら汗がにじむ程度です。汗をダラダラかくような運動は、激しすぎるのでNGです。
夏のレジャーの注意点 「慣れないことは慎重に」
この夏、登山やスキューバダイビングなど、アウトドアでのスポーツを計画している人もいるかもしれません。
血圧が高めの人に注意していただきたいのは「慣れないことは、慎重に」、ということです。
どんな活動でも、慣れないことをやれば血圧が上がりますので、初めてのことにチャレンジするときは、自分のレベルに合わせて、軽い活動からスタートすることを忘れないでください。高血圧の治療をしている人は、どの程度の運動が適切か、一度医師に相談してみてくださいね。
また、血圧が高めの人は、夏場は特に脱水に注意してください。体の水分が不足すると、血液がいわゆる「ドロドロ」の状態になって、脳卒中などのリスクが高まります。こまめに水分を補給してください。
過度のアルコール摂取は、血圧を上げてしまいます。暑いからといって、冷たいビールの飲み過ぎ……にも注意してくださいね。
次回は、「レジスタンス運動」の具体例を紹介します。
配信は7月28日(月)の予定です。