小説「女の国会」作者 新川帆立さんインタビュー
与党の女性議員が奇妙な遺書を残して自殺!? 野党議員の高月、政策秘書の沢村、政治記者の和田山、市議会議員の間橋――4人の女性が死の謎を探りながら選挙戦に突入していく小説『女の国会』。政界の波にもまれる女性たちをリアルに描き山本周五郎賞を受賞したこの作品を、作者の新川帆立さんは「ハードボイルド小説だ」と語ります。
■永田町の内外で共通の愚痴
――作品の冒頭で、調整中の法案がつぶれ、与党の国対副委員長が自殺します。因果関係は不明なのに、野党の国対副委員長の高月に謝罪しろと迫る幹事長、途中で寝返ったらしい与党の大物議員の存在などまるで現実のようです。
国会議員や地方議員に政党関係者のほか新聞記者ら男女十数人に取材しました。取材で面白かったのは、女性たちの愚痴が永田町の内と外で同じだとわかったこと。議員、記者、どのレイヤーにおいても地続きで、特殊ではないとわかりました。
――愚痴ですか。共通点は?
一発アウトとまではいえない性加害や性差別が日々起きることですね。毎日ちょっとずつ嫌な思いをして、ちりも積もればでたまるストレス。ささいなことなので、上長に言っても「まあまあ、我慢して」とか言われて対策しづらい。この程度感、女性なら分かると思う。耐えられないから自分から職場を離れる選択をしてしまう人もいる。自分の体験も反映しています。
――地元の推薦を得るため高月が和服でこびをうったり、秘書の沢村が県連副会長のセクハラにあったり。身につまされました。男性優位の社会で働く女性の現実をどうとらえていますか。
男性と女性という軸で考えたとき、男性がゲタをはいているのは間違いありません。女性が男性と同じようにふるまっても派閥の長にはなれない。トップになるのは、男だけの社会で合理的に勝ち残った結果ともいえますが。それは、女を振り落とした後の話。
小説では、そういった社会構造の中で個人がどう生きていくかを書いているつもりです。個々の立場に置かれた女性が、それぞれに頑張る。なので、私は、『女の国会』はハードボイルド小説だと思っています。
- 言論サイトRe:Ron
■理念や信念を実現するなら
――日本社会が変わるにはなにが必要でしょう?
一人一人の行動に期待します。でも、具体的には見えない大きな力、外圧がないと制度は変わらないのかな、とも思ってしまう。女性参政権も敗戦があって進んだ。もちろん、当時の個々の女性が頑張っていたことも大きいと思います。女性議員が増えればドミノ倒しみたいに変わるのでは。
――先日の東京都議会議員選挙では女性が増え、参院選でも期待されます。
数は大事ですよね。まだまだ女性は政治の世界でマイノリティーだから。それから、とにかく、女性に偉くなって欲しい、とピュアに思っています。
小説のラストで、野党議員の…