鎧(よろい)といえば戦場で身を守るための防具だが、この大鎧の実用性を度外視した絢爛(けんらん)豪華な装飾には圧倒される。
「西の横綱」ともたたえられる国宝「赤糸威大鎧(あかいとおどしおおよろい)(竹虎雀飾)」で、春日大社への奉納品。1873年のウィーン万国博覧会に日本を代表する工芸品として出品され、この大鎧をモデルにした五月飾りの甲冑(かっちゅう)も多い。
大鎧は、武士が台頭した平安時代の中期から後期にかけて、馬上から弓を射る騎射戦のための甲冑として成立した。
当時は名乗りを上げての一騎打ちが主で、武器も弓矢が主役だった。名のある上級武士が身につけ、最も格式の高い「式正(しきしょう)の鎧」とも呼ばれた。
この大鎧は、制作技術が円熟…