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青森県が改善措置命令の発出を検討している「みちのく記念病院」(画像の一部を加工しています)=2025年2月19日午後1時16分、青森県八戸市、長谷文撮影

 病院内で起きた患者同士の殺人事件を隠蔽(いんぺい)したとして、当時の院長ら2人が逮捕・起訴された青森県八戸市の「みちのく記念病院」をめぐり、県は18日、医療法に基づく改善措置命令の発出などの検討に入った。市によると、病院側は市の調査や指導に対し、事実と異なる説明をするなどしていたことが確認されたという。

 八戸市の熊谷雄一市長はこの日の会見で、「病院の健全かつ適切な運営及び医療提供体制を確保するため」として、県に対し病院への行政処分を求める通知を同日付で出したことを明らかにした。

 事件は2023年3月に発生。患者間の殺人事件で、虚偽の死亡診断書を遺族に交付するなどしたとして医師2人が逮捕された。その後、県と市は医療法に基づく立ち入り検査を計8回実施した。その結果、①医師の勤務状況について実態と記録に整合性がなく勤務時間を適正に算出できない、②一部の病室で定員を超えて患者を入院させていた、③県の許可なく病室を病室以外の目的で使用していた――ことが判明していた。県と市は3月、条例に基づく改善勧告を行った。

 県や市によると、②と③は改善が確認できたが、①は常勤医や非常勤医が記録するタイムカードなどが存在せず、詳しい勤務実態を把握できていないという。市は、常勤医の勤務時間(週32時間以上)を満たしていない医師を常勤と報告していたことが確認されたと明らかにした。

 県は今後、立ち入り検査の結果や市の通知を精査し、改善措置命令の発出を決める。発出後に改善が見られなかった場合には、管理者の変更、病院の開設許可の取り消しなどの処分の必要性を検討する。さらに、病院の業務停止という極めて重い命令を出すこともできる。

 県健康医療福祉部の守川義信部長は「地域の患者が安心できる医療体制を一日も早くつくる。そのためにも病院の考えを聞く必要がある」と話した。宮下宗一郎知事は「通知の内容を精査し、必要に応じ、改善措置命令などの措置を速やかに講じる予定」とのコメントを出した。

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