7月20日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は永田和宏さん、川野里子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さんです。☆は共選作です。
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永田和宏選
観音の細き手首にうつすらと躊躇(ためら)ひ傷のやうな接ぎ痕(あと)(宇治市)濱岡 学
非常時に核シェルターになるだろか地下三階の北習志野駅(船橋市)佐々木美彌子
宗教の対立による戦争より損得でやる戦争怖し(名古屋市)浅井 克宏
この日会う人全員に「わあ!綺麗」と言わせる披露宴の気まずさ(小田原市)中村 玲子
危機的な悲鳴と違ふ少女らの青大将を見し悲鳴なり(三鷹市)宮野隆一郎
セルリアンブルーのシャツで出かければ風も時間も私の味方(富山市)松田 わこ
「急にいなくなったりしないでくださいね」そう言ったのはあなたでしたよ(大阪市)加藤 成和
「カッコよくて頼れるせんぱい」寄せ書きに見つけるわれの知らない息子(和泉市)星田 美紀
☆子らのこと〈ガキ〉と言うひと蚕(かいこ)のこと〈お蚕(こ)さま〉と呼びぬむかしの吾が村(松戸市)猪野 富子
立夏から立秋までを積分し夏の一首を仕上げてごらん(松山市)しのはらまさし
【評】濱岡さん、手首の微(かす)かな継ぎ目が「躊躇ひ傷」に見えたのは、観音様にも何か深い傷があるのかとの思いか。佐々木さん、ウクライナでは実際にシェルターとして使われていた。十首目、面白いが、歌を作るなら、積分じゃなく微分でしょう。
川野里子選
母となれば野生動物の気分で…