米アラスカ州の奥地にある人口約350人の村で昨冬、唯一の学校が消えた。温暖化の影響で川に侵食され続け、子どもたちに危険が迫ったからだ。そこにトランプ大統領が復権したことで、住民らはさらに頭を悩ませている。
州最大の都市アンカレジから西へ約650キロ、先住民ユピックが暮らす村ナパキアックがある。川沿いの地域ほど、家はひどく傷み、人の気配がない。聞こえるのは、風の吹き抜ける音と鳥の鳴き声、時々通るバギーのエンジン音だけだ。
昨冬、幼児から高校生までが通う川沿いの学校が侵食による危険から取り壊された。
【動画】
記事の後半には、川の侵食に脅かされるナパキアックの村の様子を伝える動画があります。
ジョナサン・ネルソンさん(47)の長女(10)は別の学校に通うため、妻とともに村を離れた。自身は両親の看病のため、次女(6)と残った。ただ、それも時間の問題かもしれない。
いま、全約100世帯の半数ほどが順次、内陸部への移転を進めている。川のそばに暮らすネルソンさんも、いずれそうせざるを得ない。移転先に新校舎ができるまでの仮設の学校を建てたが、授業は一部しかできていない。
「子どもの時から窓の外に見えるこの川の景色が好きだった。でも、私たちにできることはもうないんだ」
そんななかで、トランプ氏が返り咲き、半年が経った。ではなぜ、それが住民らの不安につながるのか。
31地域が「差し迫った脅威」
2009年、ナパキアックを…