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個展のメインビジュアル「富江・チークラブ」の前に立つ伊藤潤二さん=2024年6月、東京都内
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 「マンガのアカデミー賞」とも呼ばれる米アイズナー賞の授賞式が、現地時間の25日にあり、「富江」シリーズや「うずまき」などで知られるホラーマンガ家の伊藤潤二さん(61)と「ゲゲゲの鬼太郎」で知られるマンガ家の水木しげるさん(1922~2015)が「殿堂入り」を果たした。

 この賞は米国のマンガ家ウィル・アイズナー氏の名を冠した「ウィル・アイズナーコミック産業賞」。殿堂入りは「コミック業界に多大な貢献をしたこと」が条件で、審査員の選出や、コミック業界関係者の投票によって決まる。

 今回の殿堂入りは、審査員選出で水木さんら21人を選び、事前に公表していた。一方、伊藤さんは業界関係者の投票で選ばれ、この日の授賞式で発表された。

 水木さんは1922年、鳥取県境港市生まれ。戦時中に左腕を失い、58年に「ロケットマン」でデビュー。アイズナー賞では2012年に「総員玉砕せよ!」、15年に「コミック昭和史」で最優秀アジア作品賞に選ばれていた(いずれも英語版)。

 伊藤さんは1963年、岐阜県中津川市生まれ。歯科技工士として働きながら86年に少女向けホラー雑誌「月刊ハロウィン」の新人マンガ賞「楳図賞」に「富江」を応募し、佳作入選したことを機にデビューした。

 アイズナー賞では、2019年に「伊藤潤二傑作集10 フランケンシュタイン」で最優秀コミカライズ作品賞、21年に「地獄星レミナ」で最優秀アジア作品賞、同作と「伊藤潤二短編集 BEST OF BEST」で最優秀ライター/アーティスト、22年に「伊藤潤二傑作集4 死びとの恋わずらい」で最優秀アジア作品賞と、これまで4作品で部門賞に選ばれていた(いずれも英語版)。

 日本人ではこれまで、手塚治虫さんや宮崎駿さん、「ポーの一族」で知られる萩尾望都さん、「はだしのゲン」の中沢啓治さんらが殿堂入りしている。

 伊藤さんは「大変な栄誉を授かりました。偉大な先生方が受賞された殿堂に仲間入りをさせていただくことは、誠に身に余ることで、いまだ信じられぬ思いです」とコメント。海外で日本のマンガ文化が評価されることについては「手塚治虫先生などの先輩方を中心に発展した日本のマンガは、バラエティに富んで、物語の深みも獲得しました。そう言った点が評価されているのではないかと思います」とした。

    ◇

 伊藤さんのコメント全文は次の通り。

 この度、アイズナー賞の殿堂入りという大変な栄誉を授かりました。過去に4度、部門受賞の栄誉に賜り、さらに今回、偉大な先生方が受賞された殿堂に仲間入りをさせていただく事は、誠に身に余る事で、いまだ信じられぬ思いです。1作1作、なるべく手を抜かぬように努力してきた事が報われた思いです。そしてこの栄誉にあぐらをかくことなく、これからも作品作りに励みたいと思います。

 改めてアイズナー賞の選考委員の皆様をはじめ、これまで応援してくださった読者の皆様、そして作品作りにお力をくださった各出版社様、とりわけ素晴らしい翻訳と装丁で出版してくださったアメリカVIZ Media様のお力添えに、心からの感謝を申し上げます。この度は誠にありがとうございました。

 ――自身の作品が海外で受容され、評価されていることについて、どう感じていますか。

 とてもありがたいことと思います。できるだけ作品の質を落とさないように努力してきたつもりなので、そこが評価されたのかもしれません。また、私の作品の絵が、インターネット上のミームとして広がりやすい作風だったことも、影響したのかもしれません。

 ――日本のマンガ文化がこうして海外で受け入れられていることについては、どうお考えですか。

 日本人漫画家の1人としてとてもうれしい事です。手塚治虫先生などの先輩方を中心に発展した日本の漫画は、バラエティに富んで、物語の深みも獲得しました。そう言った点が海外でも評価されているのではないかと思います。

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