天皇陛下をはじめ、皇族方の活動や皇室に関連する出来事を過去にさかのぼって紹介する「皇室365」を始めました。皇室のあり方が問われる中、公務や宮中行事などのトピックを毎週、担当記者が詳しく読み解きます。
7月26日(1995年) 戦後50年「慰霊の旅」で被爆地・長崎を訪問
1995年のこの日、天皇、皇后両陛下(当時)は戦後50年の節目にあたり、被爆地・長崎を訪れた。前年には日米の地上戦があった硫黄島を訪れており、「慰霊の旅」は長崎の後、被爆地・広島、多数の住民を巻き込む地上戦があった沖縄、大空襲の被害を受けた東京と続いた。
天皇陛下は皇太子時代の会見で「どうしても記憶しなければならない四つの日」として沖縄戦終結の日、広島と長崎の原爆の日、終戦記念日を挙げ、毎年、皇后さまとともに黙禱(もくとう)を欠かさなかった。空襲被害を受けた地域など昭和の時代から全国各地に足を運び、戦没者や遺族に思いを寄せてきた。
それらの訪問は、全国植樹祭や国民体育大会など、主催者側から行事出席への願い出を受け、その日程の前後に組み込まれる形をとっていた。
ところが、戦後50年に際してはそうした名目がなく、政府の了承のもと、慰霊に絞った訪問を宮内庁側が自治体に要請するという、前例のないケースとなった。憲法上の制約のもとで、皇室をあげて戦没者に向き合うという強い姿勢が垣間見えた。
天皇陛下の言動にも慰霊の旅にかける思いがあらわれていた。
戦後50年を翌年に控えた94年9月の会見。天皇陛下は戦後処理や歴史認識が世界的に問い直されていることを受け、「この戦争による犠牲者のことは決して心から離れるものではありません」と明かし、「常に謙虚に過去を振り返るとともに、世界の平和を目指して進んでいくことが大切と思います」と語った。
同年12月の会見では「戦争…