現場へ! 輝ける未来映画社(2)
梅雨空の6月、町家が連なる京都市街の小さな寺を訪ねた。墓地の茂みの片隅に、ひっそりと眠る「最後の侍」。ぬれそぼる黒い墓碑の前で、そっと手を合わせた。
福本清三(享年77)。映画やドラマの時代劇で「5万回斬られた男」の異名をもつ、伝説の斬られ役である。
日本海に臨む兵庫県香住(かすみ)町(現・香美(かみ)町)で左官職人の三男に生まれた。戦後占領期をへて解禁されたチャンバラ活劇が隆盛を極める1958(昭和33)年、15歳で東映京都撮影所の門をくぐる。
尊敬する俳優は喜劇王チャップリン。体を張って笑わせる演技に着想を得て、散り際の秘技・エビ反りを編み出す。テレビ時代劇「水戸黄門」「暴れん坊将軍」などで主役を引き立て、米ハリウッド映画「ラスト サムライ」(2003年)への出演で世界に知られる存在となった。
「どこかで誰かが……」の精神
未来映画社の傑作「侍タイムスリッパー」(24年)は、その福本と監督の安田淳一(58)が出会わなければ生まれなかっただろう。
子どものころから時代劇をよ…