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トークイベント「お金、闇夜で元気にまわる」で語り合う(左から)三島邦弘さん、松村圭一郎さん、佐藤友則さん=2025年6月28日、広島県庄原市のウィー東城店、ミシマ社提供

Re:Ron連載「共有地よ! 三島邦弘の思いつき見聞録」第3回

 「公」とか「公共」といえば、お上(かみ)のやることだと信じられてきた。今度はそれを企業など別のだれかにゆだねようとしている。ぼくらはどこかで自分たちには問題に対処する能力も責任もないと思っている。でも、ほんとうにそれはふつうの生活者には手の届かないものなのか。(略)この無力で無能な国家のもとで、どのように自分たちの手で生活を立てなおし、下から「公共」をつくりなおしていくか。「くらし」と「アナキズム」を結びつけることは、その知恵を手にするための出発点だ。(松村圭一郎『くらしのアナキズム』ミシマ社)

■広島・庄原の名物店長

 「正直さ、この町の将来で、明るい未来はなかなか描けないでしょ。今日は、町の希望やったよ」

 地元で建設業を営むSさんがこう言ったのは、ながい1日が終わり、ようやくたどり着いた打ち上げの席でのことだ。

 ウィー東城店(書店)の佐藤友則さん、そして隣に座る私は、「おお、そうですか」と同時に声をあげた。

 6月28日に開催された「ちゃぶ台フェスティバル」。午前から発令された熱中症アラートの下、気力でのりきった1日。そこで聞いた、Sさんの「希望」のひとことは、乾杯のビールよりはるかに心地よく体内に沁みてきた。砂漠を彷徨(ほうこう)した挙げ句に出会ったオアシスそのものであった。この日に向けて費やしたすべてが報われた気がした。

 Sさんが語った希望とは何か? そして、それはどうして起こったか? その混沌と「希望」に至るまでの考察をお伝えしたい。

 広島県北東部、過疎と高齢化が進む人口約3万人の庄原市は東城にある「よろずや」の異名をとる本屋、ウィー東城店(以下、ウィー)。そのお店を率いるのが、私と同世代であり、同志の佐藤友則さんである。

 ウィーの何がいったい「よろずや」か?

 雑誌、児童書、漫画、文芸、人文、地元本……どの棚も充実している。文具はもちろん、地元のジビエ肉などの食材や、職人さんのレザーマスクなんかもある。写真屋がなくなれば写真現像まで受け付ける。化粧品を置くようになると、「エステ」の要望がありエステを始め、その流れで美容室まで併設された。要は、町の人たちの困りごとや希望を全方位に応えていく。それが、佐藤友則であり、ウィー東城店なのだ。ちなみに、本屋の隣の建物にはパン屋さん、駐車場の敷地内にはコインランドリー、これらすべて、佐藤さんが社長を務める総商さとうが営んでいる。

この後、地元と外の会社が協働するプロジェクトの内容をたどりながら、希望とは何か、希望を奪う行き詰まり感とは何かを考察します。

■■「まつり」がフェアで「フ…

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