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がんウイルス療法の仕組みのイメージ

 ウイルスを使ってがん細胞を破壊するウイルス療法。従来の薬を改良した新薬が、皮膚がんの一種、悪性黒色腫(メラノーマ)の患者に対して高い有効性を示すことが確認できたと、東京大と信州大の研究チームが7月31日、発表した。今後、企業の参画を得て承認申請をめざしたいという。

 ウイルス療法は、遺伝子を改変し、がん細胞だけで増えるように設計したウイルスをがんに感染させ、破壊する治療法だ。ウイルスは一定程度まで増えると免疫によって排除されるが、その際に免疫ががん細胞を認識し、体内の別の部位にあるがんに対しても免疫を発揮する効果が期待できる。

 東大医科学研究所の藤堂具紀(とうどうともき)教授らはこれまでに、「単純ヘルペスウイルスⅠ型」に遺伝子改変を施したウイルス「G47Δ(デルタ)」を開発。ウイルス療法薬「テセルパツレブ(商品名デリタクト注)」として、2021年に脳腫瘍(しゅよう)の一つである悪性神経膠腫(こうしゅ)に対して条件付きで承認、販売されている。

 今回は、G47Δに、免疫反応を刺激するIL-12遺伝子を組み込み、がんへの免疫効果を改良した「T-hIL12」を開発。難治性の希少がんである悪性黒色腫で、手術ができない、または転移した患者への治療効果を治験で調べている。

 9人を対象にした中間解析では、標準治療で使われる免疫チェックポイント阻害剤に加え、T-hIL12を併用して治療したところ、治療が効いた割合は77.8%だった。免疫チェックポイント阻害剤のみによる治療では34.8%とされている。新しい薬を併用することで、治療の効果を高めていることが確認できたという。

 今後、さらに治験を続けていくという。信州大の奥山隆平教授は「乳がんや頭頸部(けいぶ)がんなど、ほかのがんでも有効性を示せると考えている」と話す。

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