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2025年6月24日、竣工(しゅんこう)した江原道の元山葛麻海岸観光地区を見て回る金正恩氏(中央)と娘。朝鮮中央通信が報じた=朝鮮通信

【連載】北朝鮮の表と裏

北朝鮮は最近、ロシアとの協力を誇示し、海沿いのリゾート施設で楽しむ市民の姿を公開しました。一方で、各国の調査や脱北者の証言を積み重ねると、北朝鮮が長く自称する「地上の楽園」の表と裏が浮かび上がります。最新情勢を5回の連載で伝えます。

 「無敵の友愛」。7月12日に北朝鮮・元山(ウォンサン)を訪れ、金正恩(キムジョンウン)総書記や崔善姫(チェソンヒ)外相らと会談したロシア・ラブロフ外相は、両国の関係をこう語った。

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2025年7月12日、ロシアのラブロフ外相(右)と抱擁する金正恩朝鮮労働党総書記。朝鮮中央通信が伝えた=朝鮮通信

 北朝鮮兵のロシア派遣により、北朝鮮は様々な恩恵を受けている。日本政府は、北朝鮮からの砲弾やミサイルを運ぶロシアの貨物船が、北朝鮮に向けて主に建設資材を運んでいるとみている。北朝鮮は今年、10年間に地方都市の200カ所で工場や病院施設を整備する「地方発展20×10政策」を始めた。資材不足で完成が6年以上遅れていた、日本海側のリゾート施設「元山葛麻(カルマ)海岸観光地区」も7月、開業にこぎつけた。

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ロシア外相、核開発を容認

 北朝鮮とロシアは昨年6月、包括的戦略パートナーシップ条約に署名した。協力は軍事分野にも及んでいる。

 ウクライナ情報総局などの分析では、ロシア南西部クルスク州に派遣された北朝鮮軍兵士は、無人機(ドローン)との戦闘を経験し、新しい戦術を学んでいる。北朝鮮は昨年8月、自爆型ドローンの性能実験を公開した。

 北朝鮮の軍事情勢に詳しい、韓国の市民団体「自主国防ネットワーク」の李逸雨(イイルウ)事務局長は「韓国軍は高価なドローンを扱う専門部隊を設けているが、北朝鮮はドローンを使い捨てと位置づけ、一般部隊にも幅広く配備しようとしている」と指摘。「北朝鮮軍のドローンは、地上戦闘だけでなく韓国の民間インフラ攻撃にも大きな威力を発揮するだろう」と語る。

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2025年6月12日、北朝鮮・羅津造船所で行われた駆逐艦「姜健」の進水式に参加する金正恩朝鮮労働党総書記と娘。朝鮮中央通信が伝えた=朝鮮通信

「西側諸国と肩を並べたい、金正恩氏の欲求が影響か」

 ラブロフ氏は金正恩氏との今年7月の会談で、改めて北朝鮮による核開発を容認する考えを示した。

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、北朝鮮が保有する核弾頭は1月時点で約50発にのぼる。弾道ミサイルだけでなく、巡航ミサイルや魚雷、大型ロケット砲など、核を運搬できる多様な手段の開発も進む。李逸雨氏は、予防攻撃、ミサイル防衛、大量報復の三つの手段で北朝鮮の攻撃を抑止する韓国の政策「3軸体系」は事実上破綻(はたん)しているとの見方を示す。

 北朝鮮は冷戦崩壊の影響で旧…

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