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写真・図版
長谷部恭男さん

 近代日本がお手本にしてきたはずの「欧米」。米国でトランプ政権が再登場したこともあってか、一部では「日本の方がマシに思えてきた」との声まで聞かれる。この事態をどう受け止めればいいのか。そして、そこから見える日本の現在地とは。立憲主義や民主主義に詳しい憲法学者の長谷部恭男さんに聞いた。

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ポピュリズムの台頭、揺らぎの根に

 日本は欧米をお手本にしてきたのかと言えば、してきたと私は思います。そもそも明治国家を造るために岩倉使節団が歴訪した先が欧米でした。戦後日本にも、欧米を目標とする発想は続いています。

 そのお手本に揺らぎが見えてきたという意識が今あるとしたら、根っこにあるのはポピュリズムの台頭に対する警戒感でしょう。

 確かに心配は心配です。とりわけ米国では、ポピュリズム的な人気に支えられたトランプ政権が違憲・違法な方法で大学をいじめており、近代立憲主義を守る防御壁になってきた制度を壊そうともしています。

 しかし、政治学者のデイビッド・ランシマンさんが言うように、民主主義は失敗から学ぶことができるシステムです。いま調子が悪いからといって米国の民主主義システムそのものをダメと総括できるものでは、おそらくないでしょう。また立憲主義の危機を言うなら、日本の安倍晋三政権もずいぶん乱暴なことをしたので、他国のことは言えません。

そもそも民主主義とは

 そもそも「民衆は政治的主体…

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