開催中の大阪・関西万博では、〈食〉に関する情報発信もさまざまに行われている。多文化との交流や気候変動など環境課題の解決がテーマになるなか、海外から招いたシェフと日本の料理人が「持続可能な美食」を一緒に表現した。
記事の後半で「おいしさでつながる世界」夕食会の献立を写真で紹介しています。
料理をつくることにどんな意味があるかを自問して
「おいしさでつながる世界」と掲げて、イベントは6月中旬、万博会場内と京都市の仁和寺(にんなじ)で行われた。
タイ、フランス、米国からの3人のシェフと、京都の日本料理の若手がチームで「未来のおいしさ」を献立にして表現するもので、監修は料亭「菊乃井」主人の村田吉弘さん(73)。企業に農林水産省や京都府なども加わる官民連携で実行委員会が作られた。
万博会場で村田さんは「自分たちが料理を作ることに、どういう意味があるのか。料理人はもっと考えないといけない」と問いかけた。京都の古寺を舞台に、どんなメッセージを打ち出したか。
各国の大使館関係者などを招いた夕食会の献立は、八寸から菓子まで、日本料理の流れにそって用意された。材料は季節感たっぷりに、全国の特産品で地理的表示(GI)登録のもの、開催した京都のもの、被災地への思いを表すもの、代替食として可能性を持つ海藻などが選ばれている。
持続可能性は美食の先頭に
そして、シェフの人選もひとつの答えになっている。
「Baan Tepa(バーン・テパ)」のチュダリー・デバカム=タムさんはバンコク、「Mirazur(ミラズール)」のマウロ・コラグレコさんは南仏、「Single Thread(シングル・スレッド)」のカイル・コノートンさんはカリフォルニア。レストランを開いた土地はさまざま、背景にある文化もそれぞれ違う。世界から客が集まるミシュランの三つ星、二つ星店のオーナーシェフだが、贅(ぜい)を競わず地域の歴史や自然に敬意をはらう料理観や、自分の農園を持ってその恵みを料理に生かす点が共通している。日本独特の食材や調理法、発酵のうま味にヒントを得ている点も同じだ。
地球環境への危機意識を、料…