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青藍泰斗―佐賀北 十回裏佐賀北1死満塁、山下はサヨナラスクイズを決める=藤尾明華撮影
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 (9日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦 佐賀北5―4青藍泰斗=延長十回タイブレーク)

 「低めは絶対に振らない」。1点を追う二回2死二塁、佐賀北の9番松尾拓実はバントの構えから、ぎりぎりでバットを引く。判定はボール。わずかに低かった。きわどい球を3球連続で見極め、四球で好機を広げた。

 続く於保(おぼ)りつ稀も選球眼を光らせる。低めの直球を見て、連続四球で満塁。直後に押し出し死球で追いついた。この回4四死球を出した相手左腕は本来、制球力が武器。松尾は「選球眼はチームとして一番こだわってきた部分」と誇った。

 昨秋の新チーム発足直後。下山勝也部長が選手を教室に集め、「座学」を開いた。2007年夏に全国制覇を果たし「がばい旋風」と呼ばれた先輩たちの映像を電子黒板に映し、あるデータを示した。

 大会史上最多を記録した48四死球だ。練習時間は約2時間と短い分、フリー打撃で好きに振ることはない。先輩たちの戦いを参考に、「低めの見極め」を徹底しようと選手間でうるさいぐらい言い合った。昼休みは弁当を食べながら、勝つ方法を議論した。下山部長は「単なる待ち球作戦じゃなくて、甘い球はちゃんと打つ。簡単に身につくことじゃない」。

 延長十回、最後は1死満塁から、山下泰槻がサヨナラスクイズを決めた。突出した打力はなくても、四球や小技で1点をもぎとる。そんな「最後の公立優勝校」のDNAは、07年生まれの3年生たちに受け継がれている。

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