(13日、第107回全国高校野球選手権大会2回戦 関東第一6―1中越)
甲子園の雰囲気にのまれかけた。
初回の立ち上がり。関東第一のエース、坂本慎太郎(3年)が先頭打者に二塁打を浴びると、犠打や暴投で、あっという間に1点を失った。
捕手の中浜一葵(同)は「緊張もあって、テンポが悪くなっている」と感じた。変化球を主体に打たせて取るのが、坂本の本来の投球だ。中浜は冷静さを保ち、いつも通り強気の配球を続け、坂本もそれに応えた。
同点で迎えた五回表1死二、三塁のピンチ。守備のタイムでマウンドに集まり、「思い切ってやろう」「攻めてOK」と声をかけ合った。その後の内野ゴロで三塁走者を三本間でアウトにし、続く4番打者には厳しめの配球で三振を奪った。
「守備からリズムをつくり、攻撃につなげるのが関一の野球」と中浜。その言葉通り、五回裏の攻撃で2点を勝ち越し。9番打者の中浜は内野ゴロで出塁すると、相手の失策の間に生還。七回裏には犠打失策で出塁し、5点目の本塁を踏んだ。
坂本とは昨秋の都大会でもバッテリーを組んだ。昨秋は直球で攻めたが敗退。その経験から、今夏の東東京大会では変化球を中心に勝ち上がってきた。
2人は寮も同じ部屋で、野球の話ばかり。坂本の投球を誰よりも知る中浜は冷静なリードに徹し、六回以降は相手に二塁を踏ませなかった。
ずっと憧れた舞台。神戸市出身で、実家から甲子園は電車などで約20分。何度も試合に足を運んだ。「あの場所で自分もプレーできたら」。親元を離れて関東第一で寮生活を送り、夢を追った。
「甲子園に戻ることができ、自分の役割も果たせた。すごくうれしい」。試合後、笑顔をのぞかせた。
スタンドへあいさつに向かった時、母・幸子さんと目があった。「全力でプレーする姿をもっと見せたい」。支えてくれた家族に恩返しをするためにも、地元の甲子園でさらなる飛躍を目指す。